「文章力を伸ばす」を読んだ感想の続きを書いていきます。
今回は後編です。
前編、中編の記事はこちらです。
それではサクッと本題へ。
本の内容
まずはAmazonから本の内容を抜粋します。
27万部のベストセラー『文章力の基本』が進化し、著者の6000件の文章指導のノウハウをまとめた1冊。「書く力は、考える力そのもの」「受け手発想で書く」「意味の狭い言葉を使う」「長文を書くポイント」など、著者が文章指導の際の生徒からの質問やよく陥りがちなミスをもとにした内容を数多く反映している。文章を書くときに大事なことだけれど、なかなか教わることがない81のポイントを、多くの文例とともにわかりやすく解説。
こんな感じの本です。
ここは前回の記事と同様です。
いくつか引用と感想
今回の記事では「第4章 読むそばからスラスラ分かるように書く」から、いくつか引用してみます。
主役を早く登場させる
「何の話なのか」「誰の話なのか」がすぐに分かるように書きましょう。書き手はそれが分かっているので、その紹介が遅れてしまうことがあります。
原文六歳で母と死に別れ、大家族の中で育って、里子に出されたり戻されたり、家庭的に恵まれぬままに成長した父は、「よい家庭を作りたい」という強い願望を持っていた。改善案父は六歳で母と死に別れ、大家族の中で育って、里子に出されたり戻されたり、家庭的に恵まれぬままに成長したので、「よい家庭を作りたい」という強い願望を持っていた。読み手は2行目の後半が来るまで、誰の話が始まったのかが分かりません。読み手にもどかしい思いをさせないでください。(原文は、竹内希衣子。「文藝春秋」2002.4月臨時増刊号。一部簡略化)
もちろん例外もありますが、以下のような構図が基本かなと思います。
- 書き手:自分の中にあったことを書いている(分かっている)
- 読み手:初見で前情報はない(分かっていない)
そういった場合に、主役を早く登場させるのは納得です。
結局は、読み手の負担をなるべく軽くする意識が重要なのかなと思います。
ただ、ちょっと引っかかる部分もあります。
仕事上の文章で主役を早く登場させるのは納得なんですが、それ以外の多くのシチュエーションでは原文でも別に良いかな~というのが正直な感想です。
娯楽の要素が少しでも含まれる文章(小説や雑誌など)なら、主役を早く登場させることにそこまでシビアにならなくても良いかなと思いました。
引用に書かれている「読み手にもどかしい思いをさせないでください。」という指摘も、ちょっと手厳しいなと感じてしまいました。
とはいえ、今回の引用は「第4章 読むそばからスラスラ分かるように書く」からの引用です。
その章に書かれている内容としては、バッチリな気もします。
基本は時系列
話は、書き手が思いついた順にではなく、読み手が理解しやすい順に展開すべきです。時間軸について言うならば、やはり基本は時系列(時間を追って古い話から順に書くこと)です。
原文今はもう辞めてしまったが、ボストンへ短期留学する前、私はこの英会話教室に小学生の頃から通っていた。高校生の時、引越しをしたのでこの教室が遠くなってしまったが、それでも電車で往復1時間かけて通い続けた。この文章は、現在 ⇒ ボストン留学前 ⇒ 小学生 ⇒ 高校生という順番に話が展開していますが、次のように小学生の時の話から順に書いた方が、読み手の頭にすんなりと入ります。
改善案私はこの英会話教室に小学生の頃から通っていた。高校生の時、引越しをしたのでこの教室が遠くなってしまったが、それでも電車で往復1時間かけて通い続けた。大学入学後も、ボストンへ短期留学する前までずっと通っていた。意図的に時間軸を逆転させる書き方はありますが、無意識のうちに時間が行ったり来たりしないようにしてください。
これも1つ前と同様、「書き手は分かっている」「読み手は分かっていない」構図から考えると、改善案の方が理解しやすいです。
書き手本人は時系列がバラバラだったとしても、混乱することはないはずです。
頭の中に思い出として残っているでしょうし。
それに対して読み手は、混乱するほどではないかもしれませんが、一度読んだ後に時系列を頭の中で少し整理するはずです。
今回の引用では時系列のワードを強調表示しているので整理しやすいですが、本来は強調表示されません。
強調表示がない想定で考えると、改善案のように時系列の順番に話を展開すると理解しやすいのは間違いないかなと思います。
修飾語は直前に置く
修飾語も思いついた時に思いついた所に書くのではなく、「どの言葉を修飾しているのか」を意識して、その言葉の直前に、あるいはなるべく近くに置きましょう。
原文入社後半年が過ぎて、次第に窮屈だと感じていた仕事の進め方が、合理的だと感じられるようになった。この文章を読んだ人は、一旦は「入社後半年が過ぎて、窮屈だと感じていた」のだと理解し、後でその逆であったと気付きます。次のように書けば、誤解は生じません。
改善案最初は窮屈だと感じていた仕事の進め方が、入社後半年が過ぎて次第に合理的だと感じられるようになった。修飾語と被修飾語を離してしまうと、このような誤解が生じます。
これは、前項の「基本は時系列」の原則に従うと誤解が生じないという例でもあります。
これも1つ前、2つ前の引用とニュアンスは近いです。
書き手は関係が分かっているので、どの言葉を修飾しているか分かっています。
読み手は関係が分かっていないはずなので、「次第に」の位置がおかしいことで一度誤解が生じます。
全ての文を読んで、ようやく理解できます。
書き手としては、「読み手の立場で読んでみて誤解が生じないか?」の目線を常に持つことが重要かなと思います。
その目線を常に持つのは大変かもしれませんが、慣れの問題な気もします。
慣れてしまえば、その目線を常に持ちながら文章を書けるようになるかなと思います。(自分もできているかはアヤシイですが。)
また、今回の引用は1つ前、2つ前の引用と比べると誤解が生じやすいパターンかなと。
なので、修飾語の位置に関しては自分もシビアにチェックしないとなと思いました。
おわりに
ということで「文章力を伸ばす(後編)」として書いてみました。
今回の記事で引用したのは
- 主役を早く登場させる
- 基本は時系列
- 修飾語は直前に置く
の3つでした。
今回の引用は3つとも、「書き手は分かっている」「読み手は分かっていない」構図がポイントかなと思います。
その構図も言ってみれば当たり前なのですが、書いている最中にその意識が薄くなると原文のようなミスが発生してしまうのかなと思います。
ずっと読み手を意識して書ければ、ミスも減りそうです。
文章術の本を何冊か読みましたが、一番大事なのは結局「読み手を意識する」ことなのかなと思いました。
「文章力を伸ばす」は3記事に渡って書きました。
他の記事も良ければぜひ。
- 【感想】『文章力を伸ばす』[前編]
- 【感想】『文章力を伸ばす』[中編]
- 【感想】『文章力を伸ばす』[後編] ← 今回の記事
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