「認知バイアス事典 行動経済学・統計学・情報学 編」を読んだ感想の続きを書いていきます。
今回は中編です。
前編の記事はこちらです。
それではサクッと本題へ。
本の内容
まずはAmazonから本の内容を抜粋します。
■「行動経済学」「統計学」「情報学」の3つの研究分野からアプローチ。
合計60の認知バイアスを解説します。
なぜか人間に実装されている脳のバグとも言うべき「認知バイアス」。
本書では、「行動経済学」「統計学」「情報学」の3つの研究分野からアプローチし、
計60の認知バイアスを豊富な図版とイラストを用いて解説します。
こんな感じの本です。
ここは前回の記事と同様です。
いくつか引用と感想
今回の記事では「第2部 認知バイアスへの統計学的アプローチ」から、いくつか引用してみます。
棒グラフの誤用
誤解を与えたり、騙すためのグラフが存在する
日常的に使われるグラフとしては、棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフが思いつく。これらは、小・中学校の教科書に使われるなど一般的なグラフだといえるだろう。
グラフの利点は、大量のデータを1枚の図として表現でき、データから視覚的に情報を読み取れるということにある。実際に、テレビや新聞のニュースではグラフを使って説明をする場面を見る。また、企業の広告などでは、商品やサービスの効果をグラフにして宣伝する場合もある。
このように、グラフは私たちの生活の中で当たり前のように使われている。そのため、私たちは普段から目にするグラフを判断の基準とすることがある。
しかし、ニュースや広告の中でも私たちの誤解を招くようなグラフが使われる場合もある。ひどい場合には、私たちを騙す目的でグラフが使われている場合もあるだろう。こうしたグラフの誤用に騙されないためにも、グラフの注意すべき点について知っておくべきである。
ここでは、棒グラフの誤用について見ていこう。
グラフって便利ですよね。
仕事で資料を作る際にも、データを分かりやすく伝えたい時はグラフを多用するようにしています。
字で埋め尽くされた資料は読みにくいですし、読み手の負荷も高くなってしまいます。
図解やグラフを多用できれば、視覚的に情報を伝えやすくなります。
資料の中でも、プレゼン資料は特に図解やグラフを多用します。
プレゼンのスライドが字で埋め尽くされていると、それを読み上げるだけの発表になってしまいます。
それではプレゼンの意味があまりない気がします。
プレゼンを見る側の立場で考えても、グラフで表現されると分かりやすくてありがたいです。
ですが、グラフの細かいところまでジックリ見たりはしないんですよね。
発表者の説明を聞きながらグラフを見ているわけですし、グラフのスライドを表示している時間も短かったりします。
なので発表者の立場で考えると、グラフの表現次第で騙そうと思えば騙せそうな気はするんですよね。(実際にはしませんけど。)
ということで、次の引用は「目盛りが省略されたグラフ」に関してです。
目盛りが省略されたグラフ
まず、棒グラフは、名前のとおり数量の大小を棒の長さによって表したグラフのことを指す。そのため、自社と他社の年間売上の比較といったように複数の値を比較する際によく使われる。
棒グラフには、棒の長さを測るための目盛りがつけられるが、棒グラフの誤用として最も多い例は、目盛りの一部を省略することが挙げられる。
仮のデータを使って簡単な例を示そう。
まずは、図1のグラフを見てほしい。このグラフは、ある製品を販売しているA社、B社、C社の利用者満足度を示しているとする。ここで、このグラフがA社の広告に使われており、広告には、「利用者満足度No.1」の文字が大きく書かれていたとしよう。さて、この宣伝は妥当だといえるだろうか。
確かにグラフを見ると、A社の満足度が最も高い。したがって、利用者満足度No.1という広告が誤りというわけではなさそうだ。しかし、グラフの左側に示された目盛りの下部を見ると、0%からではなく95%から始まっており、目盛りが省略されていることがわかる。
一方で、目盛りが省略される前のグラフ(図2)を見ると、A社、B社、C社に大きな差はないことがわかる。つまり、A社が宣伝する利用者満足度の差について広告に載せるほどの意味があるかは疑問が生じるのである。
この例で示したように、目盛りの省略には、実際にはわずかな差しかないにもかかわらず、大きな違いがあるように見せるという効果がある。もっと悪質な場合には、目盛りのないグラフが使われる場合もある。見せかけのグラフにごまかされないためにもグラフの目盛りには注意しよう。
本書では図1・図2としてグラフが載っており、目盛りの省略前後が分かりやすいです。
ですが、そのグラフをそのまま引用することはできないので、同じようなグラフをスプレッドシートで作成してみました。
同じような感じで再現できたので、今回の引用に書かれている図1・図2の代わりとして機能するかなと思います。
どちらも元となるデータは同じですが、目盛りが省略されただけでグラフの印象がかなり違うかなと思います。(以下の図1、図2)
図1はグラフだけ見ると、A社・B社・C社でデータにある程度の差があるように見えます。
ですが、目盛りの数値をよく見てみると実際にはほとんど差がありません。
対して図2はグラフ的にもA社・B社・C社でデータにほとんど差がありません。
誠実に感じるグラフではあるものの、そもそもグラフにする意味がほとんどない気もします。
図1ほど極端ではないかもしれませんが、図1に似たようなグラフはCMや広告でたまに見かける気がします。
特にCMで使用されるグラフは一瞬の表示だったりしますし、目盛りが調整されているかをチェックする時間がないくらいの短さだったりします。
仮にもう少しデータに差が出ていて、多少の目盛りの調整でデータの差が分かりやすくなるなら、自分も目盛りを省略する可能性はあります。
とはいえ図1は、あきらかに誤魔化したい気持ちがあるような気がしてしまいます。
目盛りを省略するにしても常識の範囲内でやらないとですね。
あとは、省略する場合は目盛りを調整している旨を必ず伝えるとか。
「棒グラフの誤用」でネット検索したところ、色々なグラフの誤用の事例が載っていたサイトがヒットしました。
せっかくなのでリンクしておきます。
標本の偏り
現在、さまざまな分野で行われる調査の多くは標本調査に分類され、その際に気をつけなければならないことが標本の偏りだ。
仮に当たりくじの割合が10%のくじ引きがあったとしよう。このとき、この10%という割合を調べるためにくじを100回引いたとする。引いたくじの中に当たりくじが10個あれば、当たりくじの割合が10%であると推測できる。
では、当たりくじが20個引けた場合や、1つも引けなかった場合はどうだろうか。正しく10%という割合を推測することはできない。
このように、取り出した標本が元の集団と異なる傾向にあれば、標本に偏りがあるといえる。統計学では、推測に影響を与える偏りをバイアスと呼ぶ。特に、調査者の標本の取り出し方によって生じるバイアスを標本抽出バイアス(サンプリングバイアス)という。
アンケート結果を見るとき、割合がどうとか、自分ならどこに該当するかとか、そういったところに目が行きがちかなと思います。
人によるかもしれませんが、少なくとも自分はそうだなと。
で、大事になってくるのはアンケート結果を鵜呑みにせず、どういう方法でアンケートを取ったかもチェックしておくことですよね。
アンケートの内容にもよりますが、「調査方法(電話・SNS・街頭など)」「回答者数」「年齢層」といったところが気になるところです。
回答者数が十数人しかないアンケートだったりするのも、たまに見かけます。
そういったアンケートであっても参考になるかもしれませんが、そこまで信頼性の高い物ではないですよね。
本書では「標本の偏り」に関して他の事例も挙げつつ解説されているのですが、全て引用すると長くなってしまうので割愛します。
代わりに参考になりそうなサイトをいくつかリンクしておきます。
「標本の偏り」に関して、SNS上のアンケートに対する内容が印象的でした。
その辺りも引用してみます。
標本の偏りを完全になくすのは難しい
最近では、SNS上でもアンケート調査が行われることがある。しかし、こうした調査結果の信頼性は次の理由から疑ってかかるべきだ。
●回答者の多くは調査者のフォロワーである可能性が高い。
●1人の回答者が複数のアカウントで回答しているかもしれない。
●調査者が別のアカウントを利用して回答者になることも可能に。以上の問題を避ける方法がSNSでは存在しない。したがって、どれだけ多くの回答者を得られたとしても標本の偏りを排除できないのだ。
では、インターネット・SNSなどの媒体から偏りなく情報収集できる術はあるのか?
あなたが旅行に行く際に観光地や飲食店を調べたいとき、どのようにして調べるだろうか。SNSの場所だけ調べていたり、グルメサイトの口コミだけを見ていたりしないだろうか。しかし、その情報にはSNSや口コミサイトの利用者のみの意見というバイアスが生じている。
標本の偏りを完全になくすことは難しい。しかし、さまざまな角度、方法による情報収集でバイアスの影響を少しでも外すことを意識したい。
SNS上のアンケート調査の信頼性に関しては以前から気になっていたので、そこに関して言及していた部分を引用してみました。
今回引用した内容に書かれているように、標本の偏りを排除するのは難しそうです。
こういったアンケートが全く参考にならないわけではないですが、「アンケート結果=世論」とするのは危険そうだなと。
あくまで参考程度に留めた方が良さそうだなと改めて思いました。
また、そもそもSNSを利用しない層がアンケート対象から除外されていることも気を付けたいところです。
テレビでやっている街頭インタビューに関しても、基本的に数人分のインタビューしか放送しないことが多いかなと思います。
数十人、数百人といったボリュームで全てを放送することはほとんどないかなと。
数人のインタビューにも関わらず、世間の代表みたいな感じに見えてしまうのがなんだかモヤモヤするなと。
街頭インタビューも全く参考にならないわけではないですが、あくまで参考程度に留めた方が良さそうだなと改めて思いました。
おわりに
ということで「認知バイアス事典 行動経済学・統計学・情報学 編(中編)」として書いてみました。
今回の記事で引用したのは
- 棒グラフの誤用
- 標本の偏り
の2つでした。
「標本の偏り」が印象的でした。
ニュース等でアンケート結果やランキングを見る機会がけっこうあります。
その際、アンケート方法の詳細であったり、ランキングのルールも載せているはず。
それにも目を通したうえで、そのアンケート結果やランキングをどの程度参考にするか(信用するか)を判断する習慣が身に付くと良さそうだなと思いました。
「認知バイアス事典 行動経済学・統計学・情報学 編」は3記事に渡って書きました。
他の記事も良ければぜひ。
- 【感想】『認知バイアス事典 行動経済学・統計学・情報学 編』[前編]
- 【感想】『認知バイアス事典 行動経済学・統計学・情報学 編』[中編] ← 今回の記事
- 【感想】『認知バイアス事典 行動経済学・統計学・情報学 編』[後編]
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